日本国内で非配偶者間人工授精(AID)を行っている医療施設

日本国内で非配偶者間人工授精(AID)を行っている医療施設をまとめました。

投稿日: 2023年01月21日
更新日: 2023年01月26日

日本国内で非配偶者間人工授精(AID)を行っている医療施設

非配偶者間人工授精(AID)とは

AID は Artificial Insemination by Donor の略。夫ではない第三者から提供を受けた精子を利用した人工受精によって妊娠を目指す医療方法です。 日本国内では以下のような課題が存在しています。

  • 健康保険が適用されない
  • 法的に結婚した男性不妊の夫婦にしか適用されない
  • 性的マイノリティ(LGBTQ)カップルは医療を受けることができない
  • ドナーを選べない
  • 出自を知る権利の保証

本記事は「AID 治療を受けられる条件は何か?」「東北、関東、関西、九州で AID ができる病院はどこにあるのか?」「AIDができる病院のリストがほしい」といった疑問や需要に対する内容になっています。

親族間の精子提供について

JISART(日本生殖補助医療標準化機関)加盟施設の一部では親族間(身内、夫の父や兄弟など)の精子提供による治療を実施している場合があるそうです。 他にも公表または非公表で実施している医療施設も存在するようです。

AID 治療を受けられる条件

画一的ではなく医療施設によって異なりますが、AID 治療を受けるには以下のような条件が設けられている場合が多いようです。

  • 法的に結婚した夫婦であること
  • 無精子症である、あるいは精巣精子回収術(TESE)でも妊娠に至れなかったことが診断書によって証明できる
  • 倫理委員会による審査

各医療施設の AID 治療方法まとめ

医療施設名称提供精子による治療方法
新潟医療生活協同組合 木戸病院
(新潟県)
人工授精
はらメディカルクリニック
(東京都)
人工授精、体外受精
クリニック飯塚
(東京都)
人工授精(サイトに記載なし)
オーク住吉産婦人科
(大阪府)
人工授精
西川婦人科内科クリニック
(大阪府)
人工授精
セントマザー産婦人科医院
(福岡県)
人工授精
竹内レディースクリニック
(福岡県)
人工授精
京野アートクリニック高輪
(大阪府)
人工授精(現在未実施)
慶応義塾大学 産婦人科
(東京都)
人工授精(受付中止)
東京歯科大学市川総合病院
(千葉県)
人工授精(受付中止)

本記事で紹介する AID 実施医療施設の所在都道府県と提供精子による治療方法を上記の表にまとめました。各医療施設名称がページ内リンクになっています。 関東や関西にはいくつかの医療施設が存在していますが、他の地域では 1 つしかなかったり、存在しなかったりすることもあるのが現状のようです。

はらメディカルクリニックでは 2022 年から体外授精の実施を始めましたが、その他の医療施設では日本産科婦人科学会の会告によって人工授精のみの実施が基本となっているようです。

以降、医療施設ごとの AID の実施状況について基本的な情報や周辺情報を交えてまとめています。

新潟医療生活協同組合 木戸病院

解説

木戸病院は 1976 年に設立され、今回調査した中では唯一東北地方にある医療施設です。Web サイト上に AID 登録指定病院である旨が記載されています。 1986 年に産婦人科を開始しています。ネット上の口コミによれば、母乳育児指導の評価が高いようです。

木戸病院は 2021 年に分娩の取り扱いを中止をしています。

AID に関する記載

口コミ・評判

記事、参考資料

はらメディカルクリニック

解説

はらメディカルクリニックは 1993 年に設立された、人工授精だけでなく 2022 年から体外受精による AID も実施している医療施設です。Twitter で積極的に AID に関する発信を行っています。 総合病院ではなく、婦人科に注力した事業内容になっており、原因療法と対象療法を合わせた統合医療を提供しています。

1997 年からドナーを大学病院から紹介してもらう形で AID を開始しています。現在では院内に精子バンクを設置し、年間で 750 ~ 800 周期の AID 実施数を誇っています。

不妊治療に関する説明会や相談会を度々開催しており、AID に関する勉強会を年 2 回、東京都内で開催しています。

2022 年 1 月に精子バンクを使用して体外受精を始めることを発表し、実際に 2022 年に実施を始めています。

AID に関する記載

口コミ・評判

記事、参考資料

クリニック飯塚

クリニック飯塚
画像の出典:クリニック飯塚

解説

飯塚クリニックは 1990 年に開業されました。不妊治療を専門とする婦人科があり、卵管鏡下卵管形成術を行っています。

卵管鏡下卵管形成術(FT)術の第一人者である末岡 浩医師が所属しています。

AID に関する記載

口コミ・評判

記事、参考資料

オーク住吉産婦人科

医療法人オーク会
画像の出典:医療法人オーク会

解説

オーク住吉産婦人科は 2000 年に開院した、不妊治療に特化した医療施設です。同じ医療法人オーク会のオーク銀座レディースクリニックも、日本産婦人科学会の施設検索で提供精子を用いた人工受精に関する登録施設となっています。

YouTube チャンネルで不妊治療に関する専門的な情報発信を行っています。

サテライトクリニックが複数開院されており、通院の利便性が高くなっています。

AID に関する記載

口コミ・評判

記事、参考資料

西川婦人科内科クリニック

解説

西川婦人科内科クリニックは 1971 年に開設されてから一貫して不妊治療に取り組んできた医療施設です。診療科目には婦人科以外に内科もありますが、患者のほとんどが婦人科とのこと。

不妊治療に関する個別相談室を無料で開催しています。不妊治療に関する無料のセミナーも度々開催しています。

法整備が進んだ場合、精子提供者が匿名を条件としているため AID の実施を継続できないことを Web サイト上で案内していました。

AID に関する記載

口コミ・評判

記事、参考資料

セントマザー産婦人科医院

解説

有名な不妊治療を専門とする医療施設です。分娩は取り扱っておらず、診察時間は仕事をしながらの通院に配慮した 21 時までとなっています。

福岡まで遠く通院するか迷っている方向けに、東京でカウンセリングを定期的に実施しています。

セントマザー産婦人科医院での不妊治療によって出産できた方と、医院を介して交流できる取り組みが案内されていました。

AID に関する言及

口コミ・評判

記事、参考資料

竹内レディースクリニック

解説

鹿児島県にある不妊科・産婦人科に注力した医療施設で、JISART(日本生殖補助医療標準化機関)のメンバーとなっています。着床前遺伝子診断や 睾丸内精子回収法(TESE)などの男性不妊への治療にも対応しています。2023 年 1 月時点で所属している医師 4 名の中で 3 人が女性であり、男性医師に相談しにくい内容も相談しやすいかもしれません。

不妊治療に関して、説明会や臨床心理士によるカウンセリングを案内しています。

AID に関する記載

口コミ・評判

記事、参考資料

京野アートクリニック高輪

解説

京野アートクリニック高輪は不妊治療、高度生殖医療を専門にした治療施設です。不妊の原因を検査したうえで患者に合わせたテーラーメイドの治療を行っています。

プライバシーへの配慮、メンタルケア、カウンセリングにも力を入れているようです。

診療時間は午前 7 時 30 分からであり、土曜日や日曜日、祝日も診療が行われています。仕事と治療を両立しながらの通院をしたいという患者のニーズに対応しています。

AID に関する記載

口コミ・評判

記事、参考資料

慶應義塾大学 産婦人科

解説

慶應義塾大学産婦人科は 1920 年に開始した歴史のある医療機関です。1948 年に日本で最初の AID を行ったのは慶応義塾大学医学部教授、安藤画一氏であると言われています。

Web サイト上の臨床統計によれば、AID の治療件数は 2021 年に 163 件となっていました。2016 年は 慶応義塾大学病院だけで 2000 件近くもの AID 治療実績がありました。しかし、出自を知る権利や扶養義務など法的トラブルの可能性が浮上し、ドナーの確保が難しくなり新規受け付けを停止することになったようです。

クラスター部門としてリプロダクションセンターが開設されており、産婦人科と泌尿器科が連携して夫婦での治療を受けられる体制が整っています。

AID に関する記載

口コミ・評判

記事、参考資料

東京歯科大学市川総合病院

解説

東京歯科大学 市川総合病院のリプロダクションセンターでは女性外来、男性外来が存在し、個別ではなく夫婦で情報を共有しながら治療を受けることができます。

AID に関する記載

口コミ・評判

記事、参考資料

まとめ

日本国内で AID を実施している医療施設をまとめさせていただきましたが、ドナー不足などの理由によって AID の実施を取り止めてしまった医療施設がいくつかありました。 現在 AID を実施している医療施設においても、以下の日本産科婦人科学会の会告または JISART(日本生殖補助医療標準化機関) のガイドラインによって許容される範囲に限定された運用がなされています。

法整備が進まない中で第三者の精子によって妊娠を望む場合、限られた時間で容易ではない選択肢を選ばなければならない状況になってしまっています。 また、同性カップルなど、そもそも国内での AID 治療を選択できない方も存在します。

倫理的な問題もあり簡単ではありませんが、妊娠を望む方がそれぞれ理にかなった治療を国内で受けられるようになることを願います。

AID と比較した当サイトの特徴

最後に、医療機関による AID 以外の選択肢としての当サイトの特徴を紹介します。 以前の記事、 「非配偶者間人工授精(AID)の現状と課題」でも記載しましたが、非配偶者間人工授精(AID)と比較した際のTQ-SEEDの特徴を以下にまとめました。

  • プライバシーを守りながら利用できる
  • 男性不妊以外のケースでも利用できる
  • 発生する実費のみを事前に案内して提供希望者が負担(器具の購入代金、施設利用料、交通費)
  • 希望する条件にしたがってTQ-SEEDが厳格な基準をクリアしているドナーをご提案
  • 提供を受ける前にドナーの情報を把握、面談も可能(個人を特定する情報を除く)
  • 特定のドナーからの提供回数に制限はありません
  • 出自を知る権利を尊重
TQ-SEEDではAIDを利用できる方にカウンセリングの結果としてAIDを推奨する事もありますが、AID適用の可否による精子提供の制限はしていません。 妊娠を望む人それぞれの選択を尊重します。


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