非配偶者間人工授精(AID)の現状と課題
非配偶者間人工授精(AID)の枠組みと運用、課題について解説します。
投稿日: 2021年05月28日
更新日: 2023年01月21日
非配偶者間人工授精(AID)とは
非配偶者間人工授精(AID)は、夫の精子ではどのような医療によっても妊娠に至らないとされる場合に最後の手段として提供される不妊治療方法です。
AID はArtificial Insemination by Donorsの頭文字で、ドナーによる人工授精という意味です。法的な父と子供の間で遺伝上の繋がりがなくなります。
本記事では個人同士ではなく、国内の医療機関で行われている不妊治療としての AID の現状と課題を解説します。
国内の AID 患者数と出生児
少なくとも年間 50 ~ 100 人程度が非配偶者間人工授精(AID) によって生まれており、下記データ自体は日本産婦人科学会への報告を基にしたものであるため、実際の数はもっと多い可能性があります。
年 | 患者数 | 出生数 |
---|---|---|
2013 年 | 1090 | 120 |
2012 年 | 892 | 92 |
2011 年 | 639 | 53 |
2010 年 | 806 | 97 |
2009 年 | 908 | 76 |
日本産婦人科学会 倫理委員会・登録・調査小委員会報告のデータを基に作成
人工授精の手順
非配偶者間人工授精(AID)は配偶者以外の精子を用いること以外、通常の人工受精と処置手順に差異はありません。
人工授精は人工という言葉から受ける印象とは異なり、実際のところ科学的なメカニズムとしては自然妊娠とほとんど変わりません。 次の項で簡単にではありますが、医療機関行われる手順をまとめました。
精子の採集
まず、ドナーの精液から運動性の良好な精子を集めます。遠心分離器を使ったり、精子の運動性を生かして選別したりする方法があります。
子宮への精子の注入
次に、排卵日(もしくは排卵の前日)に精子を子宮に注入します。この際に排卵誘発剤を使うと妊娠の確率が上がる一方で、血栓症の発症や多胎妊娠の可能性も上げてしまうリスクが存在します。
精子を注入する場所によってさらに細分化されます。
名称 | 注入する場所 |
---|---|
子宮頸管内人工授精 (ICI) | 子宮頸管 |
子宮腔内人工授精 (IUI) | 子宮腔内 |
卵管内人工授精 (FSP) | 卵管内 |
腹腔内人工授精 (DIPI) | 腹腔内 (ダグラス窩) |
卵管内人工授精(FSP)は精子が卵管の端まで到達しやすく、妊娠の可能性が高まります。
6 回以上上記の方法を行っても妊娠に至らない場合は体外受精、顕微授精に移行していきます。
非配偶者間人工授精(AID)の課題
非配偶者間人工授精(AID)は日本で 1948 年から行われてきた歴史の長い不妊治療法ですが、課題も存在します。
健康保険が適用されない
体外受精のような高度生殖医療と比較すると一回あたり数万円から十万円台で、そこまで高額ではないように見えます。
しかしながら AID の妊娠率は 2 ~ 10% 程度とかなり低く、健康保険が適用されないため、伴う出費は決して少なくありません。
法的に結婚した男性不妊の夫婦にしか適用されない
AID は無精子症、精巣精子回収術(TESE)でも妊娠に至ることができなかった場合にしか適用を受けることができません。
単に精子がない事を申告するだけでなく、精巣の検査結果を踏まえ、AID 以外の公的な手段が存在しない証明が必要になります。
一般に、以下の書類が要求されます。
- 夫婦の戸籍謄本
- 身分証明書
- 診断書(夫の精子を利用した妊娠が不可能であるという証明)
選択的シングルマザー、LGBT(性的マイノリティ)カップルは 対象外となり、AID の適用を受けることができません。 法律的に決まっている、というよりも以下のようなガイドラインに従って運用されているのが実状のようです。
ドナーを選べない
日本国内では精子のドナーについて、「血液型をあわせる」こと以外はできない運用になっています。 海外の精子バンクのように、ドナーの情報を見て選ぶことはできません。 また、同一のドナーから提供を受けて二人以上の子供を妊娠する、といったこともできません。
ドナーの情報が得られない
非配偶者間人工授精(AID)では基本的に精子ドナーの情報を知ることができません。
AID と比較した当サイトの特徴
最後に、非配偶者間人工授精(AID)と比較した際のTQ-SEEDの特徴を以下にまとめました。
- プライバシーを守りながら利用できる
- 男性不妊以外のケースでも利用できる
- 発生する実費のみを事前に案内して提供希望者が負担(器具の購入代金、施設利用料、交通費)
- 希望する条件にしたがってTQ-SEEDが厳格な基準をクリアしているドナーをご提案
- 提供を受ける前にドナーの情報を把握、面談も可能(個人を特定する情報を除く)
- 特定のドナーからの提供回数に制限はありません
- 出自を知る権利を尊重