精子提供にはリスクがある
インターネット上で近年、精子の取引を持ちかけるサイトや書き込みが目立っている。不妊に悩む夫婦などが誘いに応じる例は少なくないが、医療機関の介在はなく感染症の懸念が排除できない。性暴力を受けそうになった、提供者の情報が事実と違う――。当事者同士のやり取りゆえに事件や訴訟につながる危うさもつきまとう。
近年精子提供の様々なリスクがテレビ、ネットニュースなどのメディア媒体で報道され、取り沙汰されるようになりました。TQ-SEED
ではこういったリスクの一つ一つに配慮し、予防策、対策を整備したうえで運営をしています。
各リスクごとにTQ-SEEDの取り組みを紹介します。
面談、提供時のトラブル
ドナーと実際に対面した際に、以下のようなトラブルが起こるかもしれません。ドナーが信頼できる人物なのか判断しなければなりません。
ドナーが提供、性行為を強要する
傷害、誹謗中傷行為
金銭トラブル
TQ-SEEDの取り組み
提供前のドナーとの面談を必須にしています。万が一、ドナーによる不手際や迷惑行為があれば、TQ-SEED運営に連絡をしていただくことで直ちにしかるべき対応を行うフローを整えています。
精子提供に伴う実費を提供希望者に負担いただくことで提供希望者とドナーの対等な関係性を保つようにしています。
事前に取り決めた費用のみが請求され、ドナーから謝礼を要求されることはありません。
性感染症
タイミング法に限らず、シリンジ法であっても性感染症に感染する可能性があります。
ドナー、提供希望者双方の性的な接触が多いほどリスクは高まっていきます。性感染症検査に加えて、連鎖的な感染を防ぐために感染機会を最小限に抑えることが重要です。
注意点
潜伏期間があり、直近三ヵ月以内に感染していると検査で検知できない感染症があります。
TQ-SEEDの取り組み
検査の義務付けだけでなく、提供期間中の第三者との性行為を利用規約で制限しています。第三者の存在も含めたリスクコントロールを徹底しています。
シリンジ法の場合、雑菌の付着、混入を避けるために清潔な器具、採取場所を確保するようドナーに指導しています。
精子提供における性感染症のリスクについては、以前の記事「
性病と精子提供」で解説しています。
遺伝疾患
ドナーに遺伝性の疾患があると、その疾患は生まれてくる子供に引き継がれてしまうリスクがあります。
注意点
母親や潜性遺伝子の影響によって疾患が発現する可能性を完全に排除することはできません。
TQ-SEEDの取り組み
ドナーの健康状況の所見、医療機関での健診結果を一年ごとに確認しています。
出産後のトラブル
無事に出産を終えた後、親権やプライバシーに関連するトラブルに発展する可能性があります。また、ドナーが失踪してしまい、子どもの出自を知る権利を行使できなくなるリスクも存在します。
個人でこのようなトラブルに対処するのは容易ではありません。
TQ-SEEDの取り組み
提供希望者の家庭に踏み込まず、生まれた子供を認知したり、親権を要求したりしないことをドナーと取り決めています。
出自を知る権利については、以後の記事「
出自を知る権利」で解説しています。
虚偽情報の提示
「男性は京都大学出身の独身で、大手企業の社員証も持っていたので、すっかり信用してしまいました。しかし、蓋を開けてみると勤務先以外は全部嘘だったのです」
提供希望者に対して経歴や属性を偽る、不都合な情報を伝えない。信頼関係を根底から揺るがす行為であり、TQ-SEEDを立ち上げた最も大きな理由がこのリスクの存在です。
インターネット上で精子提供の活動を行っている個人数名を対象に、独自に調査※を行ったところ、
未成年者に付きまといトラブルになったうえ、コミュニティへの迷惑行為を繰り返すなどの問題を起こした過去を持っていながら、
サイト上ではその事実を伏せたまま提供希望者を募っていると思われる個人を見つけました。
少し調べただけでもこのような実態があり、取り引きにおけるエスクローのような仕組みやファクトチェックがない個人間の精子提供はドナー情報の透明性に大きな問題を抱えています。
※サイトに掲載されている内容や、ドメイン登録情報など公開されている情報に基づいたものです
TQ-SEEDの取り組み
ドナーと対面での面談を行い、本人確認をしています。人柄を含めて信用できるドナーしか登録されないようにしています。
ドナーが受ける精液検査をTQ-SEEDが指定する方法に限ることで信憑性を担保します。
アレルギーなど、軽微なものを含むドナーの要配慮情報提示を徹底しています。
学歴証明に関しては、卒業証書ではなく新規に発行した卒業証明書の提示をしていただき、確認を取っています。
TQ-SEED以外の提供者情報を任意で提供希望者にヒアリング、集約しています。TQ-SEED以外の提供者の信頼性について、お問い合わせいただければ、情報共有、調査、評価をいたしますので、お気軽にお問い合わせください。
プライバシー、セキュリティ
精子提供の活動において情報の取り扱いを間違えると、提供希望者は安心して提供を受けることができないだけでなく、実生活にまで波及する実害につながってしまうリスクがあります。
プライバシーの尊重とセキュリティ対策は妥協が許されない領域であり、情報は取り扱い方が明確化された上で適切に保全されなければなりません。
TQ-SEEDの取り組み
オンライン上のデータのやり取りはセキュリティが確保された大手クラウドサービスのみで完結するようにサービスを設計、運用しています。
提供希望者の個人を特定する情報は保持せず、その他の取得した情報はプライバシーポリシーに則って厳重に管理しています。
必要性のなくなったデータは順次削除し、情報漏洩のリスクを減らしています。
子供の養育環境
生きる権利
すべての子どもの命が守られること育つ権利
もって生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療や教育、生活への支援などを受け、友達と遊んだりすること
守られる権利
暴力や搾取、有害な労働などから守られること
参加する権利
自由に意見を表したり、団体を作ったりできること
提供希望者が生まれてくる子供を安定して養育できる環境を維持できるかどうかは、見過ごせない観点であるとTQ-SEEDは考えています。
生まれてくる子供には権利があり、尊重されなければなりません。提供希望者には養育の責任があります。
TQ-SEEDの取り組み
提供希望者の希望理由、経済状況などの審査をしています。定性的な側面もありますが、基準に満たなかった提供希望者への提供をお断りしています。