性病と精子提供
性感染症、いわゆる性病と精子提供の関係、リスクについて解説します。
投稿日: 2021年07月11日
精子提供の感染症リスク
国内の医療機関では、感染症のリスクをできる限り排除するために精子の凍結処理や検査をしっかり行っています。 個人でこういった処置を行うための設備を用意するのは難しいため、個人間の精子提供では安全性が確認できていないそのままの状態の精子(精液)が用いられます。
個人間の精子提供において、性感染症の検査結果を提示することで安全性を示す事がありますが、それだけで十分なのでしょうか。 感染症以外にも遺伝疾患など様々なリスクが存在しますが、今回は性感染症に的を絞り、精子提供を受ける際の観点を解説します。
性病には潜伏期間がある
多くの性感染症は、感染してから潜伏期間を経て症状が出ます。潜伏期間中は症状は出ないものの、すでに他の人に感染させてしまう可能性がある状態です。また、感染直後に検査しても陰性になってしまうことがあります。 つまり、仮に検査で陰性だったとしても、感染機会から十分な期間を経てから検査を受けなければ有効な検査とは言えないということになります。
また、当然ながら検査後に感染機会があれば、その時点で検査の有効性は著しく低下します。 結局のところ、精子提供者の 性感染症の検査結果だけを見ても、潜んでいる感染リスクを十分に評価できないことがわかります。
主な性感染症の潜伏期間と検査できる時期を表にまとめました。
性病 | 潜伏期間 | 検査できる時期 |
---|---|---|
クラミジア | 1 週間から 3 週間 | 2 ~ 3 日 |
淋病 | 3 日から 1 週間 | 2 ~ 3 日 |
HIV エイズ | 90 日から数年 | 6 週間以降 |
梅毒 | 3 週間から 3 ヵ月 | 6 週間以降 |
トリコモナス | 1 週間から 3 週間 | 2 ~ 3 日 |
カンジダ | 2 日から 1 週間 | 2 ~ 3 日 |
B 型肝炎 | 1 ヵ月から半年 | 2 か月 |
C 型肝炎 | 2 週間から 3 ヵ月 | 3 か月 |
各種性感染病の概要や症状、治療方法などについては、以下のような Web ページで確認できます。
性病の予防方法
性行為をしなければ性病に感染する可能性を大幅に下げることができます。 しかし、個人の精子提供を受ける場合にはシリンジ法であっても感染リスクが伴います。
いくつか気を付けたほうが良い点を列挙します。
不特定多数との性的接触を避ける
性的な接触をした人数が増えるほど感染するリスクが高まります。
性病予防の観点では、性的な接触をする人を限定することが望ましいです。
不特定多数との性的接触が疑われる人との性的接触を避ける
仮に性的な接触をする人を限定できたとしても、その中に不特定多数との性的な接触を行っている人がいれば感染リスクが高まります。
そのような人とは性的な接触を行わないことが感染予防に繋がります。
性器に傷がない状態をできる限り保つ
性器に傷がある状態で性行為をすると、血液を経由して感染する性感染症に感染しやすくなります。
清潔にする
不衛生な状態では、雑菌やウイルスが繁殖しやすいため、寝具を清潔に保ち、性行為を行う前に身体を洗っておきましょう。
歯磨きをする場合、口の中を傷付けて出血しないように注意してください。傷口や血液由来で感染の危険が伴います。
感染源になりうるものを共用しない
剃刀、歯ブラシ、タオルといった病原菌などを媒介しうるものを共用するのは避けましょう。
検査を受ける
感染機会に応じて、検査を受けることが大切です。
潜伏期間の長い性感染症もありますが、一週間以内に検査可能なものも多いため、気になる場合は都度検査を受け、万が一陽性だった場合はすぐに医療機関で治療してもらいましょう。
精子提供における性感染症検査確認フロー
ドナーに対し、性感染症の検査結果を求める精子提供の Web サイトが存在します。このような検査結果の確認は有効なものなのでしょうか。
他サイトのよくある確認フロー
- 精子提供者が検査を受ける
- 精子提供者が Web サイト上から検査結果のスクリーンショット、pdf ファイルなどをアップロード
- 管理者がスクリーンショットを確認
- 検査結果の更新は必要ないか、年に一回程度実施
TQ-SEED の確認フロー
他にも様々な対策に取り組んでいますが、TQ-SEEDが実際に行っている性感染症検査結果の確認フローについて、大まかな内容をご紹介します。
- TQ-SEEDが性病検査キットを手配
- 検査キットをドナーに受け渡し
- ドナーが検体を採取
- 検体を検査会社に送付
- 検査会社が検体を検査
- TQ-SEEDが検査結果を確認
まるで風俗店が従業員に課しているフローのようではないかと思ってしまうかもしれませんが、実際に同じようなリスクが存在している以上、必要なフローであると考えています。
ここまでやっても性感染症のリスクを完全に無くすことはできません。
まとめ
本記事の要点は、まとめると以下の 4 点です。
- 個人間の精子提供には性感染症のリスクが伴う。
- 検査結果だけで十分に感染リスクを評価することは難しい。
- 性感染症には潜伏期間があり、予防策と感染機会に応じた検査をしっかり行う必要がある。
- 精子提供マッチングサイトなどの検査結果確認方法は完全にリスクを排除するものではない。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。