日本国内における精子提供の実態
日本国内における精子提供の形態、パターンを分類し、それぞれのリスクを考察します。
投稿日: 2021年06月03日
更新日: 2021年06月21日
この記事で対象としている精子提供の形態
本記事はいわゆる医療機関として公的に認められた精子バンクではなく、医療機関を介さずにシリンジ法やタイミング法による提供を行っている個人、団体、サービスを対象にしています。
これらの考察、リスク分析をしていきます。
知り合い、親族からの提供
知り合いや親族から精子の提供を受ける事例が存在します。
身元が明らかであるのは不安感の緩和につながるのではないかと思います。親族であれば遺伝的に近しい、という面もメリットになり得ます。 一方で、必ずしも身近な提供者が存在するわけではないため、選択肢は相応に限られます。
日本国の現状の法整備においては出自を知る権利、嫡出推定などで問題になる可能性が残ります。 国内の医療系の団体の間でも親族からの精子提供については意見が分かれているようです。
インターネット上の個人提供者
2021 年現在、インターネット上には精子提供を行っている個人、団体、サービスが多数存在します。法整備が進まない中、国内で AID 治療を受けられない、もしくは精子提供者の素性を把握したい提供希望者の受け皿になってしまっています。
個人 SNS アカウント
SNS でアカウントを開設し、提供希望者を募るパターンです。開かれたインターネットの良さと危うさを併せ持っています。
Twitter であれば誰でも手軽にアカウントを作って始めることができるため、提示内容への裏付けや安全な提供に至る保障はなく、仲裁者もいないため様々なリスクが存在しているのが実態です。
ブログ、簡易ホスティングサイト
個人、または数名の精子提供者で構成されるブログ、小規模な Web サイトがあります。
SNS の個人アカウントに比べるとブログや Web サイトは情報量がある事が多く、提供者の人となり、人格や倫理観の問題に気づきやすいのはメリット?かもしれません。
ブログや Web サイトを用意する必要があるため、活動への熱量は高いと言えます。とはいえ、世の中にはブログや Web サイトを専門的な知識なしに作成できるサービスがたくさんあるため、ページの見た目だけで判断するのは危険です。
複数名で構成されているのであれば、単独での身勝手な行動に対する抑止力が働きそうな印象がありますが、裏で結託していないという保障はありません。
真っ当に活動している方もいるかもしれませんが、伝えられた情報に虚偽や不足がないか細心の注意が必要なのは SNS の個人提供者と同じです。
掲示板サイト
掲示板上で提供者や希望者が連絡先や条件などの内容をやり取りします。
やり取りが進むとクローズドな一対一のやり取りに移行するのが通例で、性質としてメールアドレスさえあればやり取りができてしまう SNS と同様の手軽さがあります。その手軽さゆえに相応のリスクが伴うものです。 掲示板を介していたとしても、やり取りの主体、責任が利用者にあることに変わりありません。
治安の良さはそれぞれの掲示板で異なります。インターネットは本質的に自由であるため、こういった形態は完全に否定されるべきものではないですが、利用する場合は慎重な判断が求められます。
マッチングサイト
数ある個人 SNS アカウントや個人サイトから提供者を選択することと大きな違いはないものの、マッチングサイトでは提供希望者が掲載された情報を見比べ、自由にドナーを選び、コンタクトをとることができます。
ドナーの登録に相応のハードルを設けているところが多く、一見リスクが低くなっているように見えますが、ドナー登録の条件やマッチング後の介入度合いに差異があります。
現状、ドナーの登録前の確認が不十分または不透明で、マッチングした後の介入に消極的なサイトが大多数を占めています。
当サイトの立ち位置
TQ-SEEDは他のマッチングサイトのようにドナーの情報を一般に公開しておらず、ご要望に合わせてドナーを提案する形をとっており、選択の裁量が限られています。 審査基準が厳しいため、登録ドナーの数は決して多くありません。 また、生まれてくる子供の養育環境に配慮し、提供希望者にも審査を行っています。そのため、誰でも希望すれば提供を受けられるわけではありません。
しかしながら、本記事で紹介してきた通り、国内の精子提供において提供希望者は様々なリスクに晒されている現状があります。この課題意識がTQ-SEED立ち上げの出発点となっています。
TQ-SEEDは安心・安全を重視する妊娠を望む方への有望な選択肢となるよう、徹底したプライバシーの保護と積極的仲介を提供価値に位置づけ、今後も運営していきます。
本記事はここまでです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。